技術情報

ラージパッチの防除

日本芝のコースに全国的に発生するラージパッチ(葉腐病)は、言うまでも無く日本芝の主要病害です。それは土壌伝播性の菌類 Rhizoctonia Solani AG 2-2 LP[または Rhizoctonia Solani AG 2-2(Ⅳ)]により引き起こされます。

アメリカではシーショア・パスパラム、キクユグラス、バミューダグラス、セントオーガスチングラスや、センチピードグラスにも感染するという報告があります。今回は、バイエルUSが提供している技術情報および参考文献*に基づいて、ラージパッチについての情報を紹介します。

 

// ラージパッチとその防除について

日本におけるラージパッチの記録は1970年代から報告が見られ、日本芝草学会発行(前身の日本芝草研究会時代を含む)の「芝草研究」には、1980年頃からこの病害に関する研究報告が見られます。

病原菌 Rhizoctonia Solani AG 2-2は、生育適温が21-26℃(バイエルUSの技術情報より)で、土壌を介して日本芝へ感染し、葉鞘および地際部を腐敗させます。また、これら以外の部位からは僅かに菌が検出されるが影響はほぼないと考えられています。

この菌は、主に土壌表層またはサッチ直下で生息しているとされており、多くは刈込や更新作業などでできた傷から芝体内に侵入・感染するとされています。感 染後から病斑が出現するまではある程度の時間を要すると考えられており、病斑出現前2週間に急に病原菌の検出割合が増加するとの報告もあります。

夏の高温期では芝体内からこの菌は検出されず、そのほかの季節では罹病部付近から常に検出されることや、春は前年の秋の発生場所に出現することが多いのに 対して秋は春の発生場所とは関係無く新たに発生することが多いとされていることから、感染は秋から春まで続くと考えられ、春のラージパッチの被害は秋より も甚大になる傾向がみられます。また、秋から冬にかけて、病斑の外側にある健全に見える生葉からもこの菌は検出されます。

ラージパッチが問題になり始めたころは、罹病部から Rhizoctonia Solani の他に、フザリウム菌やカーブラリア菌が同時に検出された報告が多く見られますが、最近では薬剤による防除効果が充分得られなかった場所からはゾイシアデクラインを引き起こす菌が同時に検出されるケースが多くなっています。

ラージパッチ対策には、日当たりや排水の改善などもありますが、作業効率の良い薬剤による防除が広く浸透しています。

当初この病害には効果のある薬剤が無いとされていましたが、1983年にトルクロルホスメチル剤で高い効果があることが報告され、その後イソプロチオラ ン・フルトラニル剤、そして弊社のペンシクロン剤(セレンターフ顆粒水和剤の有効成分)が発売され、長らくラージパッチ防除に貢献してきました。その後 次々と効果の高い剤が発売され、現在に至ります。

 

// 薬剤防除のポイント

薬剤防除においては、まずは、農薬登録のあるものを、注意事項をよく読んで適用通りに使用していただくことはもちろんのことですが、ポイントとして、この病害に対しては発生前の予防散布の方が効果が高いことが知られています。

秋のラージパッチは、発生させてしまうとその後の冷涼な気候と短日条件により、芝生の回復が充分でないまま冬季の休眠に入り、翌年の夏まで罹病部が枯れたまま残ることも多くあります。そのため、より一層秋の予防散布は重要となります。

秋処理では平均地温が22-23℃(サッチの平均温度が21℃)に達した時が最適な薬剤処理時期といわれ(バイエルUSの技術情報より)、弊社では、この病害に卓効を示すペンフルフェン剤(商品名「オブテインフロアブル」)の予防散布を推奨しています。春処理ではペンシクロン剤(商品名「セレンターフ顆粒水和剤」)などが最適です。

また、上述のゾイシアデクラインとの同時(混合)感染には、両病害に高い効果のあるテブコナゾール剤(商品名「クルセイダーフロアブル」)が、秋の予防散布に推奨しています。

 

ストレスガード芝草技術 ラージパッチ
ラージパッチ罹病部の拡大写真。注意してみると、葉の先端と匍匐茎が腐敗しているが、葉身は腐敗していない。(バイエルUSのHPより)

 

ストレスガード芝草技術 ラージパッチ
ゴルフ場のZoysiagrassのフェアウェイで、直径20フィート(約6.1m)に達したラージパッチのダメージ。(バイエルUSのHPより)

 

ストレスガード芝草技術 ラージパッチ
関東地区ゴルフ場で観察されたラージパッチ(2014年6月)。

 

// ラージパッチ防除に関する情報

ラージパッチのに詳細情報はこちらから

*参考文献

  • 小林堅志「リゾクトニアラージパッチに関する研究(第1報)芝草研究9:119-125」1980年
  • 小林堅志「リゾクトニアラージパッチに関する研究(第2報)芝草研究9:127-131」1980年
  • 小林堅志「リゾクトニアラージパッチに関する研究(第3報)芝草研究10:121-128」1981年
  • 小林堅志「リゾクトニアラージパッチに関する研究(第5報)芝草研究12:149-157」1983年
  • 青柳岳人ら「ゴルフ場における Rhizoctonia solani AG2-2 LPの生存様式 芝草研究24別1:76-77」1995年
  • 矢口重治ら「ラージパッチ常発コースにおけるリゾクトニア菌の発生消長について 芝草研究20別1:75-76」1991年