炭疽病

病原体:コレトトリカム菌

晩春から初夏にかけてが最も炭疽病の発生の多い時期である。多くの場合、高温と乾燥で激化する。診断は菌特有の小さな三日月形の胞子と針のような黒い剛毛を観察することで可能であるが、感染初期にはまだ形成されていないので注意が必要。疑われる場合は診断を依頼する。

【発生芝種】ベントグラス、ライグラス、ケンタッキーブルーグラス、スズメノカタビラ、日本芝、バミューダグラス
【別名】アンスラクノーズ(Anthracnose)

菌の主な生息部位

炭疽病の主な菌の生息部位

 

発生芝種・発生時期

炭疽病の発生芝種および発生時期

 

炭疽病

 

発生生態

晩春から初夏にかけてが最も発生の多い時期である。年によるが早春や冷夏にも激しく発生する。雪解け直後にも発生する場合がある。多くの場合、高温と乾燥で激化する。一般的な症状としては低温時の発生や感染初期では黄色の、気温が上昇すると赤みを帯びた不鮮明な不定形パッチ(5~50cm)となる。

しかし、症状のみでは細菌病ブラウンパッチピシウムドライスポットなどとの区別は困難である。発生源が胞子の場合はスポット状に発生し、ダラースポットに似ているがやや赤みを帯びているので区別できる。

ピシウム病との区別も困難であるがピシウム病は水ミチの下方に沿って発生するが、炭疽病はどちらかといえば上方 にも発生する。 診断は菌特有の小さな三日月形の胞子と針のような黒い剛毛を観察することで可能であるが、感染初期にはまだ形成されていないので注意を要する。

疑われる場合は診断を依頼する。ソッドをポリ袋に2~3日入れておくと剛毛と胞子の発生を促すことができる。感染組織表面には暗褐色で亜球形の付着器が残って いることがある。

雪解け後などの早春期の病原菌は芝の根元の冠部内の細胞間隙で潜在感染しているが、悪環境や他の病原菌の侵入によるストレスで芝が弱ってくると細胞内に侵入を開始する。感染部位の違いから冷涼期に発生する株腐れ症状と、温暖期に発生する葉腐れ症状に分ける場合がある。後者でも放置しておくと株腐れま で進行し、回復には時間を要する。

日本芝に発生する炭疽病は赤褐色~褐色の春先のしずみ症状で、発生時期と場所、回復状況などは外着生根部感染(ETRI)病やチガヤシロオカイガラムシによる被害と非常によく似ているので肉眼的には区別できない。

 

予防対策

冬~早春にかけての潜在感染時期では大きな被害とはならない。しかしこのまま放置しておくと、これらが感染源となって初夏に大発生させてしまう。つまり春の軽微な症状でも防除を怠ると取り返しがつかなくなる。それゆえ、春先(3月)の予防散布は重要である。風通しをよくし、グリーンスピードをできるだけ下 げ(刈高、ローラーかけに注意)、肥料(特にN肥料)を切らさないようにしておくことである。

炭疽病の発生と生育抑制剤使用との関係を論じる研究者もあるので、そのような兆候があれば使用は控えた方がよい。炭疽病菌は付着器を造り、芝の細胞壁を貫通して侵入するのでケイ酸やカルシウムを与えて芝を強固にすることは耕種的防除法となる。刈り込み回数の多いグリーンでは発生が少ない傾向である。一部の動物(特に馬)に対して毒性があるといわれ、馬の放牧地からは除去する必要がある。

 

治療対策

QoI、MBC、DMI剤、多作用点阻害剤などが有効であるが米国では耐性菌出現の報告があり、同じ作用性の薬剤を連続して使用しないように計画を立てることが大切である。ピシウム病、ダラースポット、ブラウンパッチ、細菌病、ドライスポットなどとの混合感染もあるので診断依頼して散布薬剤を決定する方が賢明である。

 

参考写真

炭疽病

炭疽病菌コレトトリカムの菌そう

 

炭疽病

芝に感染する炭疽菌の分生胞子3形態。 a:寒地型芝に感染するズングリした三日月形胞子 b:暖地型芝に感染する鋭い三日月形の胞子 c:暖地型芝に感染する付属糸(矢印)を持った鋭い三日月形胞子

 

炭疽病

炭疽菌に感染したベントグラスの葉身上に発達した剛毛。剛毛はルーペなどで観察することができる(ベントグリーン 9月)

 

炭疽病

炭疽菌製造場所である分生子盤(胞子の塊りと剛毛)。剛毛は胞子よりも後で造られることがあるのでルーペ診断には要注意

 

炭疽病

炭疽菌の胞子発芽と付着器形成。付着器から菌は芝に侵入する。 a、b:胞子(矢印)から発芽管が伸び、その先に暗褐色の付着器を形成 c:1個の胞子(矢印)から菌糸を伸ばし、その先端に付着器や三日月形胞子(写真上)を形成している

 

炭疽病

ベントグラスの葉鞘表面の付着器と細胞の中に侵入している菌糸。 この侵入菌糸が芝の細胞から養分を吸収する(ベントグリーン 12月)

 

炭疽病

発生初期の炭疽病。初期には赤褐色症状になることが多い(ベントグリーン 4月)

 

炭疽病

上位葉は緑色であるが下位葉は暗褐色になっている炭疽病。このような場合は上から観察しても正常に見え、感染を見過ごしやすい(ベントグリーン 4月)

 

炭疽病

暖地型芝に感染する2種類の炭疽菌の付着器。 a:やや突起のある大きな付着器を形成する種類(ノシバ 5月) b:さらに大きくて丸い形の付着器を持つ種類. この種の胞子は付属糸を持っている(ノシバ 5月)

 

炭疽病

コウライグリーン(12月)に発生した炭疽病。胞子に付属糸のある菌種で症状は赤褐色になっている

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