葉腐病(ラージパッチ)

病原体:リゾクトニア菌

ラージパッチの発生は気温と降雨が最大の原因である(冷夏、多雨、長雨、温かい早春や晩秋)。発生が始まる目安は、春は気温が20℃を越した日が続きだして降雨のあった頃に、秋は15℃を割る日が続きだして降雨のあった頃である。

【発生芝種】日本芝、セントオーガスチングラス
【別名】リゾクトニアラージパッチ、ゾイシアパッチ、リゾクトニアブライト

菌の主な生息部位

 

発生芝種・発生時期

 

葉腐病(ラージパッチ)

 

発生生態

ラージパッチの発生は気温と降雨が最大の環境要因である(冷夏、多雨、長雨、暖かい早春や晩秋)。発生の始まる目安は、春は気温が20℃を越してきた日が続きだして降雨のあったころに、秋は15℃を割る日が続きだして降雨のあったころである。発 病の増加は最低気温15℃、最高気温20℃以上になり、降雨があると激しくなっていく。しかし、夏近くになって気温が上昇し、芝の生育が旺盛になると症状 は衰えてくる。したがって冷涼地では発生時期は5~9月に、沖縄地方では11~4月となる。発生の予察としては芝体内の病原菌の検出率が5%位になってく ると、その1~2週間後に発生が始まるという結果も参考になる。ヒメコウライよりもノシバの方が、また草丈は低い方よりも高い方が発病しやすい。 芝の地際部葉鞘に感染すると黄化~褐変し、引き抜きやすくなる。パッチ内の芝を調べるとほとんどの場合他の病原菌が混入、感染している。混合感染に よって葉鞘は枯死し、症状がさらに激しくなってパッチ内の芝はほとんど無くなってしまう。ゾイシアデクラインピシウムさび炭疸カーブラリアミク ロドキウムなどの各菌の混合感染がみられる。

 

予防対策

低水量散布(0.25L以下)は省力的である。しかし、地上部の菌密度は低下するが葉鞘内側や土壌中の密度低下には難 があり効果不安定となる場合がある。薬剤から逃れた病原菌の一部は越夏または越冬(潜在感染)して次のシーズンの第一次伝染源になってしまう。またラフな どの草丈の高いところでは地際まで薬液が届きにくく、しかも土壌表面が乾燥気味の時はさらに効果の低下を招く。排水口付近やグリーン周りは過湿になりやす く発生しやすいので特に丁寧に散布する。散布薬量を上げるよりも散布水量を上げたほうが菌密度は下がり、効果も安定するという結果も報告されている。薬剤処理は初発のギリギリになるまで散布を控え、遅くまで効果を持たせる傾向にある。この場合は目に見えない感染・発病がすでに始まっているので治療効果のあ る薬剤を使用すべきである。 発生の予察は各ゴルフ場にとっては非常に重要である。初発の時期を勘案して研究された結果、予防散布の適期は土壌水分(降雨)の影響も大きいが、春期は最低気温10℃以上の日が1~2回あったときに、秋期は最低気温14℃以下の日が5~6回になったときがよいと報告されている。つまり最高気温よりも最低気温の方が散布日を決める重要なファクターになっている。

展着剤は散布水量が0.25L以下のときに添加すると効果的となる。発生しやすいラフ、水はけの悪いところ、散水でかかりやすいグリーン周りは特に丁寧に散布することが肝要である。薬剤としてはフェニルウレア剤、DMI剤、SDHI剤などが使われる。 春に発生するパッチは症状が明瞭で美観を著しく損ねるが、秋に発生するパッチは春ほど目立たないので散布を省略することがある。しかし、秋は一旦発 生させると低温期に入り芝の生長が衰え、翌年まで症状を持ち越すことになり、また翌春の第一次発生源ともなる。それゆえ秋期の予防散布も極めて重要であ る。

薬剤以外の抑制対策としては1~2cmくらいまでの表層を酸性化(pH5以下)、土壌の透水性・通気性の改善、pHの高い目砂を使わないなどがあげ られる。硫黄を使って土壌pHをさげる方法はもはや推奨されていない。また、感染時期直前のサッチの除去、刈り込み、張り替え、コアリングなどの作業は控 えたほうがよい。つまり、病原菌の感染時期である(修復が困難になる生殖生長期の)芝にキズを着けないことが大切である。また、窒素肥料の施用が多い(芝 体内の窒素含量2%を超える)と発生を助長する。土壌微生物の細菌(シュードモナス菌)を利用したラージパッチ防除の試みが試験されているが、この菌をい かに土壌中で増殖させるかが成否につながる。

 

治療対策

病原菌は地際部からほふく根茎も含め、地下3cmくらいまでが多いので散布水量は多い方が効果はより安定する。発生後のスポット処理は菌密度が極めて高く なっているので天候をみながら、水量と薬量を守って実施すべきである。発生の最盛期ではパッチの外側の1m位までは病原菌は広がっているので散布面はパッ チよりも広くとること。また、パッチの回復を早めるために殺菌剤と肥料を混ぜて処理することもある。ゾイシアデクラインとの混合感染の場合は両菌に有効な 剤を処理しないと回復が早まらない。治療効果のある剤としてはフェニルウレア剤、DMI剤や抗生物質剤などがあるが、剤の性質によっては降雨に弱いものも あるので注意して選定することである。治療剤を処理しても効果が出ない場合は、混合感染の他に薬害が発生している芝(根部異常)や肥料切れの芝にみられ る。これは芝が弱り回復できないためである。

 

バイエルの推薦防除方法

SDHI剤、QoI剤、DMI剤、尿素剤の予防散布が効果的です。

 

参考写真

葉腐病(ラージパッチ) 23-1

ラージパッチのリゾクトニア菌の菌そう。 菌そうは均質な褐色となり、ブラウンパッチ菌の菌そうとは異なる 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-2

増殖後期になると菌糸はほぼ直角に分岐するのがリゾクトニア菌の特徴である 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-3

ラージパッチの感染芝を培養すると枯れ木のように菌糸が伸びてくる(低倍率) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-4

縁が褐色になっているラージパッチの初期発生(ノシバラフ 6月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-5

ラージパッチに感染したノシバの葉鞘にみられた太いリゾクトニア菌(ラフ 4月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-6

感染組織上の褐色のリゾクトニア菌。 ラージパッチ感染後期と考えられる(ノシバラフ 4月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-7

ラージパッチ(太い褐色菌糸)とゾイシアデクライン(菌足のある菌糸)の混合感染。ラージパッチ症状の芝から観察されたがこの場合の防除には両病に有効な薬剤が必要となる(フェアウエイ 5月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-8

前年秋に発生したラージパッチ跡からの再発生(コウライラフ 6月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-9

無防除のためにほぼ全面に発生したラージパッチ(コウライフェアウェイ 5月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-10

気温が上昇し、回復傾向にあるラージパッチ(フェアウェイ 6月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-11

秋期のラージパッチは春期と比べて症状は軽い(コウライフェアウェイ 11月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-12

前年秋に発生したラージパッチは黒ずんだ冬枯れのまま春を向かえる(フェアウェイ 3月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-13

ラージパッチの発生は美観を悪くするのみならず、雑草が生えやすくなる(コウライフェアウェイ 5月) 

 

葉腐病(ラージパッチ) 23-14

ラージパッチのエアレーション効果。 スジ状に芝が回復している。エアレーションは芝にキズを付ける悪影響もあるので注意(コウライフェアウェイ 5月) 

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