雪腐病

病原体:ティフラ菌、ミクロドキウム菌、ピシウム菌、ミリオスクレロチニア菌、コプリナス菌

雪腐病は北海道から日本海側を中心とした積雪地帯において融雪後に現れるパッチの総称である。積雪機関が長いほど被害が大きいが、最近では積雪がなくとも発生が認められているので、その他の地域でも問題になっている。病原菌は気温-2℃~5℃の低温と過湿の条件下で病原性を示す。

【別名】スノーモールド(Snow mold)、スノーブライト(Snow blight)

菌の主な生息部位

 

 

発生芝種・発生時期

雪腐病

 

発生生態

雪腐病は北海道から日本海側を中心とした積雪地帯において融雪後に現れるパッチの総称である。積雪期間 が長いほど被害が大きいが、最近では積雪が無 くとも発生が認められているのでその他の地域でも問題になっている。病原菌は気温-2~5℃の低温と過湿の条件下で病原性を示す。積雪の低温下では拮抗菌 など他の微生物の活動は停止し、蓄積炭水化物が減少して抵抗力の弱った芝に病原菌は日和見的に菌糸を伸ばし侵入・感染する。

  • 雪腐(褐色、黒色)小粒菌核病
  • 土壌伝染性のこの病気は積雪が多く、土壌が凍結しない地域に多く発生する。小さなスポットから1m位の褐色 パッチが発生し、乾くと白色(菌糸の塊り)になる。パッチの様子で軽症(I型)と重症(Ⅱ型)に分ける場合もある。病原菌であるティフラ菌はかすがい連結 を持つ担子菌でパッチ内部の枯死葉や根部には褐色または黒色のツブ(菌核)を冬の終わりに形成する。越夏した菌核は秋になるとこん棒状の桃色または白色の キノコ(子実体)が出てくる。
    褐色小粒菌核病の場合は菌核から伸びる菌糸と胞子が感染源となるが、黒色小粒菌核病では菌糸のみが感染源となる。本州では茎葉部を侵害する褐色小粒菌核病が多く発生する。黒色小粒菌核病は気孔付近の細胞に侵入し、地際深く(冠部)まで感染するので回復に時間がかかる。症状の軽い小さなパッチは降雪に関係な く晩秋や初春に発生する。

  • 紅色雪腐病
  • 数cmから50cmのパッチを形成し、雪融け7~10日後のみ 桃色~赤褐色に、その後は淡褐色~褐色に変わ る。水はけのよい火山灰土地域や残雪になる場所に発生しやすい。土壌伝染および種子伝染する。パッチ内に菌核はできない。積雪がなくても発生し、この場合はミクロドキウムパッチといわれる。罹病組織を観察するとカマ形胞子が無数見られる。

  • 雪腐大粒菌核病
  • 胞子飛散による空気伝染性のこの病気は積雪の有無にかかわらず土壌が凍結するような北海道の東部で発生が多い。これは芝の凍障害により感染が容易になるためという。パッチ内にネズミの糞状の黒いツブ(菌核)を形成し、秋になるとここから茶褐色のキノコ(子のう 盤)を造る。褐色小粒菌核病と同様に芝の下部まで感染するので回復に時間がかかる。

  • 褐色雪腐病
  • 湿った雪質地帯で雪解けの停滞水や水ミチに沿って発生するとい う特徴のある土壌伝染性病害である。パッチの 大きさはダラースポットのサイズから大きなものまで様々であるが輪郭が不鮮明で乾燥すると灰褐色になる。I型のパッチが多く、パッチ内にはツブは形成されない。根雪初期あるいは融雪直後に菌糸または遊走子が気孔侵入して感染、発病させ、劇症の場合は根部まで枯死させる。感染組織内には菌特有の胞子のうや丸 い卵胞子が形成されている。越夏は卵胞子である。

  • その他の雪腐病
  • ティフラ菌の一種 Typhula phacorrhiza による雪腐病は日本では発生が少ないが、他のティフラ菌に対して拮抗作用がある。芝への病原性は弱い。コプリナス雪腐病も日本で確認されているが発生は少 なく、パッチの周縁が淡い褐色帯になっているのが特徴である。コムギスッポヌケ病菌も雪腐病を発生させ、ネズミ色のツブ(菌核)を造る。

 

予防対策

雪腐病は11月から12月の積雪前に薬剤を予防的に散布するのが基本である。散布が遅れて積雪が始まった時でも浅いうちならそのまま液剤や粒剤を処理しても有効である。殺菌剤としてはDMI、ジカルボキシイミド、AH、MBC、QoI、SDHIや多作用点阻害剤などが使われる。褐色雪腐病予防にはピシウム菌に有効な剤となる。散布後降雨があると薬剤の流亡が激しく効果が低下する。浸透移行性の薬剤は低温時期使用のためその性質を発揮できない。少水量 散布は効率的であるが地際深くまで薬剤が到達せず、第一次伝染源となる土壌中の菌を温存する危険性が指摘されている。固着剤の添加効果は使用する薬剤の性質によって異なる。粒剤タイプの薬剤は降雨に強く、流亡は少ないと思われる。

耕種的には、秋期 (9~10月)りん酸を含む施肥は芝に炭水化物を蓄積させるので発生を軽減させる。しかし、芝を遅くまで緑色を保つために晩秋に即効性の肥料を与えすぎると発生を助長するので注意する。芝を低刈りにして直立させると発生は少なくなるといわれる。pHが7以上の中~アルカリ土壌では発生しやすくなるので酸性の目砂や肥料を使うとよい。

 

治療対策

融雪前の除雪や融雪剤処理、融雪後の目砂・施肥は芝の芽立ちを早め、症状を早く消失させる効果がある。また、融雪後に薬剤を散布することもあるが褐色雪腐病の場合では有効なことが多い。グリーンカバーやインターシードも有効といわれている。

 

バイエルの推薦防除方法

根雪前にDMI剤、ベンズイミダゾール剤、ジカルボキシイミド剤、QoI剤、有機銅剤を複数回散布することが効果的です。

 

参考写真

雪腐病 20-1

雪腐褐色小粒菌核病菌ティフラの菌そう. 褐色の菌核およびそこから形成される細い白色の子実体(キノコ)

 

雪腐病 20-2

雪腐黒色小粒菌核病菌の黒褐色菌そう

 

雪腐病 20-3

ティフラ菌の菌核から出現したキノコ(子実体). 前年冬に形成された多数の菌核が土壌中で越夏し、残っていたことを示す(ベントグリーン 10月)

 

雪腐病 20-4

感染枯死葉上に形成された雪腐褐色小粒菌核病菌の褐色の菌核(矢印)(3月)

 

雪腐病 20-5

雪腐黒色小粒菌核病菌の無数の小さな黒色をしたパッチ内の菌核(矢印)(4月)

 

雪腐病 20-6

雪腐大粒菌核病のパッチ内に現れた大きな黒い菌核(矢印)(4月)

 

雪腐病 20-7

前年予防処理しなかったベントグリーンでの大発生(雪腐褐色小粒菌核病 3月)

 

雪腐病 20-8

雪腐黒色小粒菌核病の典型的な縁がやや白っぽいパッチで黒い粒(菌核)がみられる(ベントグリーン 4月)

 

雪腐病 20-9

融雪水の水ミチに沿って発生した褐色雪腐病(フェアウェイ 4月)

 

雪腐病 20-10

褐色雪腐病は低温性のピシウム菌による. 灰色になった葉には多くの卵胞子があり、これで越夏する(ベントグリーン 4月)

 

雪腐病 20-11

ラフに発生した紅色雪腐病(ブルーグラス 11月)

 

雪腐病 20-12

雪腐大粒菌核病の発生(ブルーグラスラフ 4月)

 

雪腐病 20-13

雪腐黒色小粒菌核病の防除結果(4月) 右半分が前年12月初旬にDMI混合剤散布. 左半分は無処理区

 

雪腐病 20-14

グリーンにのみDMI混合剤を前年根雪前に散布. 周りは雪腐褐色小粒菌核病の大発生(4月)

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